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Manifest Study

マニフェスト研究

02.農業政策

農産物の工場化

水耕栽培による農業の工業化-農業政策

目次

政策提言として

植物工場に関しては、まだまだ技術改革が必要な分野ではありますが、年々技術の向上とノウハウの蓄積が進んでいます。

生産人口の減少が現実的に地方の大きな課題としている今、農業の担い手についても減少の一途をたどっていますので、農業の工場化は地方の経済基盤を支えるための施策として必要不可欠なものとなります。

「まだ技術が確立していないから手を出さない」ではなく、「今から技術を確立していくことで将来の地域未来を明るくしていく」というつもりで、行政側から積極的に植物工場の推進を図っていくことが出来ます。

背景

  • 耕地面積の減少と耕作放棄地の増加
  • 農業従事者の減少と高齢化
  • 農業従事の新規参入の難しさと過酷な労働
  • 規模を拡大する農家は純増する一方、規模を縮小する農家の増加
  • 農業従事者の高齢化と単位面積当たりの収益の低迷
  • 大規模農家も高齢化と収益の低迷で規模維持が困難
  • 自然災害が原因で収益が不安定

根本的な原因

  • 生産人口の減少と高齢化
  • 農業初心者の新規参入のハードルの高さ
  • 冷夏や暖冬、台風などの気象変動の影響

質問と提言例

 耕地面積の減少と耕作放棄地の増加に歯止めがかからない現状がありますが、規模を縮小している農家が増えていることが原因だと推測されます。
 規模を拡大している農家も純増しているとはいえ、単位面積当たりの収益が減少していることから、経営規模の維持も困難な状況が続いています。
 生産人口の減少と農業従事者の高齢化が根本的な原因の一つとして挙げられますが、人口減少と高齢化の問題の深刻化は今後も続いていくことは避けられない事態です。
 新たに農業に新規参入する人を増やすことで農業従事者を増やすことにも繋がりますが、農業に対する知識の不足から収益が安定しない課題と、収入が発生するまでの期間の生活費の確保の難しさは、新規参入に対する障害となっています。
 農業に従事する環境に関しても、労働条件の過酷さや個々の農産物に対する知識の複雑さなどは、農業従事者の減少に歯止めがかからない原因としても考えられます。
 さらに、気象変動の影響で作物に被害があると農家の収益に直接被害を及ぼし、収入が不安定になる問題も抱えています。
 そこで、根本的な課題を解決するために、農業の工場化を進めることはこれらの課題に対する一つの解決策となるのではないでしょうか。
 全ての農産物を工場化できるわけではないが、対応できる農産物を工場化し、気象変動に影響を受けることなく生産を安定化させることが出来ます。
 さらに、農産物の工場化を推進することで、工場で働く従業員は農業に関する知識の乏しいパートやアルバイトでも作業することが出来、作業がやりやすくなることで高齢の方でも体への負担が少ない状態で作業を進めることが出来ます。
 耕作放棄地の有効活用と、農業従事者に対する支援、農業の収入の安定化に対する施策に対し、どのような対策を講じているかについて質問するとともに、農業の工場化に対しての助成の可能性についても質問させていただきます。  

工業型農業とは

工業型農業とは、農産物・畜産物・魚貝類を産業的に生産する近代艇的な農業体系で、農業機械と農業技術革新・遺伝子工学・経済的生産規模拡大の技術・新しい消費市場の創造・国際貿易などを含みます。

これらの手法は、先進国に幅広く普及しており、スーパーマーケットで販売されるような食肉・乳製品・卵・果実・野菜などの大部分は、工業型農業の手法を用いて生産されています。

植物工場

植物工場とは、内部環境をコントロールした閉鎖的な空間で植物を計画的に生産するシステムのことです。

植物工場による栽培方法のことを、工場栽培と呼びます。

植物工場は、安全な食料の供給と、食材の周年供給を目的としており、環境保全型の生産システムです。

一般的には、溶液栽培を利用しており、自然光や人工光を光源として植物を成育させ、温度・湿度の制御などを行い、植物の周年・計画生産が可能となります。

一概に植物工場といっても、完全に環境を制御した閉鎖環境を作る「完全制御型」の施設から、温室などの半閉鎖環境で太陽光の利用を基本として雨天・曇天時の補光や夏季の高温抑制などを行う「太陽光利用型」の施設などがあります。

簡易的なものには「ガラスハウス」と呼ばれるビニールハウスに近いものもありますが、どの程度の施設から植物工場と呼ぶかの明確な定義はありません。

完全制御型の植物工場

完全制御型の植物工場とは、外部と切り離された閉鎖的な空間において、人工的光源・各種空調設備・溶液培養により完全に制御された環境で生産を行う植物工場のことを言います。

レタス換算で1日に1,000株以上の生産が出来る大規模のものから、飲食店で野菜を作り店で消費する「店産店消」の小規模のものから様々な規模のシステムが開発されています。

中にはミニ植物工場と呼ばれ、展示用や家庭用のものまであります。

完全制御型の植物工場は露地栽培と比べると、利点もありますが、やはり欠点もあります。

完全制御型の植物工場の利点

・安定供給

冷夏や暖冬、台風などの気象変動の影響を受けることがなく、病原菌や害虫の被害に遭う危険性が極めて低いために凶作という概念がなく、一定の生産量・整った形・味や栄養素などの品質の高い生産物を安定した価格で提供できます。

・安全性

病原菌や害虫の侵入の危険性が極めて低いため、予防や駆除するための農薬散布が不要となり、無農薬による安全な生産が可能となります。

生産物に付着している細菌数が少なく、土が付着することもないため、無洗浄か簡易的な洗浄だけですぐに食べることが出来ますので、洗浄の手間や水道代を節約することにもつながります。

特に外食産業においては、費用の削減に繋げることのできる野菜として需要は高く、コンビニエンスストアなどで販売されているサンドウィッチに使用するレタスや焼き肉店の手巻き用のサンチュは植物工場で生産され利用されているものが少なくありません。

・高速生産

地域特有の土壌に影響されることなく、溶液栽培で生産されますので、連作障害を起こす心配はなく、連作生産が可能となります。

光の強さや照射時間、温度や湿度、培養液の成分や二酸化炭素濃度をコントロールすることで、植物ごとの最適な生育環境を作り出すことで成長を促進させることが出来ます。

そのため、短期間で出荷可能な状態まで育てることが出来るうえ、年に十数回の生産も可能となります。

・土地の高度利用

生産時の時々の植物の大きさに合わせて苗を移動させることにより、最大限の密度での栽培が可能で、棚状に複数配置する方法など、土地の利用効率を高めることが出来ます。

・労務上のメリット

栽培技術を標準化することで、農業知識が乏しいパートやアルバイトでも作業を行うことが出来ます。

また、労働環境が過酷ではなくなるために、高齢者や障害者による作業が可能となり、障害者の授産施設として植物工場を稼働させることもできます。

完全制御型の植物工場の欠点

・生産費用の高額化

工場を建設する際には、各種設備をそろえる必要があるため、どうしても初期投資が高額になってしまい、新規参入のハードルが高くなってしまいます。

近年では植物の育成に特化した高演色LEDの導入によって光熱費の問題は改善されてはきていますが、高圧ナトリウムランプ、蛍光灯、発光ダイオードなどの植物の育成に必要な光源や、光源から発生する熱の冷却、適温維持のための空調にかかる電気代も高額になってしまいます。

・栽培品目が少ない

高額となる生産費用が原因で、採算の合う品目は少ないのが現状です。

溶液栽培が可能となっている品種の中でも、リーフレタスなどの葉菜類や、一部のハーブ類程度になります。

太陽光利用型の植物工場

太陽光利用型の植物工場とは、太陽光を利用するもので、ガラスハウスやビニールハウスを利用したものになります。

施設によっては人工光による補光を行うものがあり、施設の上部を開閉し、温度上昇に対して空調費を抑えるために、植物や一部を冷却する部分冷却も行われます。

・完全制御型と比較したときの利点

太陽光を主とした光源に利用するため、光熱費を抑えることが出来、採算の合わない根菜などが生産可能であり、維持コストは少額で済みます。

・完全制御型と比較したときの欠点

完全制御型の植物工法ほどの効率性はなく、周年生産は出来ません。

完全制御型の工場は高層化が可能であるのに対し、太陽光利用型は農地で行われるために、設置時に広大な敷地が必要となります。

施設によっては、太陽光による温度上昇に対処するために外気を導入する半閉鎖的な環境となり、細菌などの侵入の危険性も高まり、農薬が必要となります。

全ての植物工場が黒字となるわけではない

生産性が向上し、安定した生産管理により、いいことばかりのような気がする植物工場ですが、絶対的に夢の工場となるわけではないようです。

最大の理由は、まだまだ発展途上にある技術のために、大量生産のノウハウの確立までは至っていません。

研究室レベルでは成功しても、いざ大規模化を図ろうとすると思ったような生産が出来ないといった事例もあるようです。

・水質の安定化に課題

土を使わずに生産することが出来る「水耕栽培」ですが、地元の水がカルシウムを多く含むために実験通りの水質に安定しないという事例もあります。

地域によって水質は様々なので、画一的な水質に安定させるためには、まだまだ研究が必要なようです。

・温度と湿度調整の難しさ

地域によっては、雨の多い地域・雨の少ない地域が様々あり、温度と湿度を一定に保つことが難しいようです。

研究室レベルであれば比較的安定した環境を保つことは容易ですが、大規模な施設となると安定させるには技術が確立されていません。

適度な温度と湿度を安定させられなければ、生産性に大きく影響して今します。

・販売価格の適正化に課題

生産ノウハウが確立していき、安定的に生産を行うことが出来るようになっても、販売に関しても課題が残ります。

スーパーでの販売価格が路地ものと比べ1.5倍ほどの価格になることも少なくなく、消費者にとっては手に出せない価格になってしまっては、本末転倒となります。

今はまだ一般消費者にとっては割高となる「水耕栽培」ですが、外食産業などでは「手間がかからない」「品質が安定している」といった評価も高く、販売ルートの確立が進めば、価格についても少しずつ下げることは出来ます。

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